おおむね三頭身の頭でっかちで、愛嬌のある「の」の字型の目、ちょっと上向き加減の小さな鼻、笑みを浮かべた口元。ぽっこりふくらんだお腹、丈夫そうな二の足を「気をつけ」のポーズでそろえ、短い二の腕は「深呼吸」のポーズで左右に。両肩(あるいは首のつけね)には、開いた両手と同じくらいの大きさの「羽根」を生やし、小首をかしげながら、その視線は、斜め下から横へ。頭のてっぺんには、トレードマークのとがった髪がひと房、耳の上からうなじに沿っても、風に吹かれたように、「くせ毛」の束が頭部を取り囲んでいます。衣装の類は、いっさいに身にまとわず、年齢・性別は不詳です。-人形にせよ、キャラクター・イメージにせよ、「キューピー」(Kewpie)は、その「明快な姿かたち」で知られています。
キューピーの原点は、アメリカの婦人・家庭雑誌『ザ・レディース・ホーム・ジャーナル』(The Ladies' Home Journal)1909年12月号に掲載された、女性イラストレーター、ローズ・オニール(Rose O'Neill:1874-1944年)の「イラストレーションつき短編ファンタジー・ポエム」でした。「世界の子どもと大人に幸せをもたらす、擬人化された存在」として、「クリスマスの晩に地球に降り立ち、子どもの枕元にやってきた」という設定です。こうしたストーリーは、誰が読んでも分かりやすいうえ、時代背景を鑑みると、そのイメージは、世代、国や地域を越えて受容しやすく、大いに魅力が感じられたに違いありません。
事実、たちまち人気を博したアメリカでは、絵本やペーパー・ドール(紙人形)となり、1912年、ドイツにおいて、精巧なビスク・ドール(磁器人形)のプロトタイプが誕生。さらに日本でも、大正初期(1910年代初め)には「made in Japan」製品(セルロイド人形)が生産され、まもなく「きゅーぴーさん」が全国のお茶の間に浸透していったことから、キャラクターとしての認知度、訴求力の高さには、驚かされるものがあります。
本展は、100年前にアメリカで生まれ、ドイツ、日本で展開されたキューピーの足跡を、原画、掲載誌、商業広告、さまざまな印刷物、人形、グッズなど、約600点の作品でたどり、今なお世界中で愛されているキャラクターの魅力を紹介します。