本展では、洋画家・宮本三郎(1905[明治38]年-1974[昭和49]年)が多様な人物表現を追及した作品とともに、その制作風景を撮影した中村立行(1912[大正元]年-1995[平成7]年)の写真を併せてご紹介します。
1950年代、宮本はアトリエの中だけでは捉えきれない、より「生きた人間像」を求めて、様々な生活環境に足繁く通い、素描を試みました。
その様子は、美術雑誌『アトリエ』1956年1月号で、「素描による人間追求」と題し特集され、そこでは、その現場を撮影した中村立行の写真も掲載されました。
中村立行は、写真による造形的なヌード表現を目指す一方、雑誌『アトリエ』での宮本をはじめ、
林 武や 三岸節子など、同時代の洋画家たちのアトリエを撮影しており、それらは制作中の画家を間近でとらえた、貴重なドキュメントとなっています。
楽屋のダンサーや、施設で日々を送る老人、
路上で働く人々―。
宮本が様々な人々を凝視し、素描という実践を重ねた成果は、その後1960年代の油彩による《浅草の踊り子》シリーズへと展開しました。
画家がモチーフを見出す瞬間。
その鋭い眼差しを克明に撮影した記録写真とともに、宮本三郎の制作の現場と、その軌跡を辿りたいと思います。