現在の奈良の地に都が移されて2010年で1300年の年月が経ちました。都のあったころの建物、寺院、ほとけはあるものは残り、あるものは再興され、あるものは失われてゆきました。けれども、奈良、あるいは大和という風景や言葉には、なにかしら懐かしさや日本人としての心情を私たちに感じさせてくれるような響きがあるのではないでしょうか。
人生のほとんどを名古屋で過ごした杉本健吉画伯も奈良を「心のふるさと」とよんでいました。また「奈良の風景はあぐらをかいたような景色、それで非常に僕に合っている」ともいっていました。比類のない歴史や文化があるとともに、不思議と格式張らない、くつろいだ雰囲気を奈良に感じていたのでしょう。そんな雰囲気が「心のふるさと」という言葉になったことと思います。
今回の展示も、奈良の歴史や文化の風景なのですが、作品を鑑賞していただくと不思議とくつろいだ気持を持っていただけるのではないかと思います。ともに開催する「花とほとけ」展も同様です。ぜひ、作品の鑑賞をつうじてくつろぎのひとときをおすごしください。