布による空間造形で広く知られる庄司達(しょうじさとる)(1939年生)は1968年に開いた初個展から今日に至るまで、ほぼ一貫して布による空間造形に取り組んできました。近年では、外部からの力が加わらなければ空間を形成しない布に加えて、同じようにしなやかな性質を持ちながら自らも一定の力を有している竹という素材も用い、観る者に作品を取り巻く空間をも意識させるインスタレーションを精力的に展開しています。国内外での個展開催やグループ展への招待出品などその活動は高く評価されており、平成21年度にはその業績から愛知県芸術文化選奨を受賞するなど、愛知県を代表する現代造形作家のひとりといえるでしょう。
本展では当館の大きな展示室内に設置される、竹と布を用いた《空間軸の内と外》のシリーズによる新作のほか、館内各所に展示される新作が中心となります。作家によって構成された、布と糸、竹によって生じる張力が発する緊張感、表面に現れる凹凸や波うちによって感じられる空間の魅力、素材の魅力は、私たちを日常から非日常の空間へと誘います。開館3年目の若い美術館の空間と、どのように融合するかが見所のひとつです。一方、40余年の長きにわたる作家の活動を振り返るべく、布による作品の原点ともいえる《白い布による空間》シリーズの小作品など過去の作品を展示するほか、各地でおこなってきたインスタレーション作品についてもその模型や写真によって紹介します。
現在もなお精力的な活動を続ける造形作家・庄司 達がどのような意識を持ち、作品を通して私たちの目の前に現そうとしているのかをぜひ感じてください。