この度、奈義町現代美術館では、生命の連鎖をテーマに、絵画、立体、インスタレーションの制作に取り組んでいる作家、花田洋通の個展「~淡い浮力~」を開催します。
花田は、1990年代後半から本格的な作家活動をはじめ、平面から立体へと表現の幅を広げつつ、イメージを素材に、場所、空間に応じた変化に富む作品を制作しています。それは、社会の枠組みや制度を超越して、自由で思惟を喚起させてくれるインスタレーションや絵画作品として結実したものであります。彼は「急速に変化しつづける社会の中で、私たちは様々な刺激を受け、イメージを生み、その殆どを形にしている、その集大成したものが現代社会とも言えます。私たちはその社会の中で生きる「人間」であると同時に生き物としての「ヒト」でもあります。私自身にとって日常生活でそれを感じ取れる場所が「浴槽」です。浴槽は社会的地位を持ち込めない場であり、自身の身体と向き合う場でもあります。体内の鼓動に耳を傾け、自身について見詰め直す事は、生命について、そして個と個のつながりについて考える切っ掛けとなります。また、そこから観る人の個々の内的な感覚から生み出されるものは社会の枠を超えて、より原始的でグローバルな自然のサイクルに沿ったイメージが見えてくるのではないでしょうか。」
今展は、奈義MOCAのニュートラルな展示空間からインスパイヤされたイメージを、石鹸を素材にして制作するインスタレーション作品「淡い浮力」と、10年来の制作テーマとして制作してきた絵画作品「浴槽で見る夢」を合わせ、静謐な最新作によって構成された展覧会となっています。
花田の作品に込めた思いやメッセージを受け止めることで、イメージを膨らませ、あらためて現代に生きることや人との繋がりについて思いを巡らす切っ掛けになれれば幸いです。