本展では、当館所蔵の又兵衛作と伝わる絵巻の一つ「浄瑠璃物語絵巻」(重要文化財)と、江戸時代後期を代表する風景版画の名作として後世に大きな影響を与えた、北斎「冨嶽三十六景」、広重「東海道五十三次(保永堂版)」を展観いたします。
「浄瑠璃物語絵巻」は、源氏の御曹子-牛若と浄瑠璃御前の恋物語を江戸時代初期に絵画化した1巻が約11メートル、全12巻におよぶ長大で彩色豊かな絵巻です。数ある又兵衛絵巻群の中でも他を凌駕するほどの完成度の高さを備えています。
「冨嶽三十六景」は、数々の名作を世に送り出した葛飾北斎の画業の集大成ともいえるシリーズで、天保2年(1831)に出版されました。遠近諸方向から眺めた富士をテーマに様々な画法を用いて表現しています。北斎の「冨嶽三十六景」の出版から2年後の天保4年(1833)から翌年にかけて、歌川広重は版元保永堂より「東海道五十三次」を刊行し、爆発的な人気を博しました。本シリーズは55枚に及ぶ揃物で、東海道をとりまく四季折々の自然の美しさとその中に生きる人々の姿をとらえ、見る人に旅への想いをかきたてました。
本展を通じ、江戸時代初期に活躍した岩佐又兵衛の華麗な絵巻の世界と北斎・広重の風景版画の魅力を是非お楽しみ下さい。