こどもの姿は、絵巻や浮世絵、彫刻など、古くからさまざまな日本の美術作品の中で表されてきました。そこには、こどもの純真無垢な心や、子の成長を願う親の思いが表現されています。また「七歳までは神のうち」といわれるように、神仏との関わりをイメージした、こどもを神聖なものとする観念を含んだものもあります。
この展覧会では、江戸時代以前に制作された作品を中心として、美術・工芸・考古の各分野から「こども」を表現した作品、こどもが身に付けた衣装や手にとって遊んだ玩具など、およそ180件の作品をご紹介します。中でも、奈良の興福寺から「八部衆立像 沙羯羅」が特別に出品されるほか、日本三大絵巻と称される「伴大納言絵巻」(出光美術館蔵)「信貴山縁起絵巻」(朝護孫子寺蔵)「粉河寺縁起絵巻」(粉河寺蔵)が一堂に会するのは圧巻といえるでしょう。また、子供の姿を描いた近代の名品としておなじみの岸田劉生筆「麗子像」、横山大観筆「無我」も展示いたします。
親子の関係などこどもたちをとりまくさまざまな問題があらためて注目されている今日、こどもたちに注がれてきた慈愛と畏敬の念に満ちたまなざしを見直す機会となれば幸いです。