19世紀半ばから20世紀前半のフランス、イギリス、日本に焦点を当て、芸術家たちが田園で形成したコミュニティー「芸術家村」を紹介します。
本展では、芸術家村の先駆けであるフランスのバルビゾン派から、独特の銀灰色調が美しいジャン=バティスト=カミーユ・コロー《大農園》(山梨県立美術館蔵)、数々の芸術家村を生み出したイギリス発アーツ・アンド・クラフツ運動から、ウィリアム・モリス設立の印刷所ケルムスコット・プレス刊本の最高傑作『チョーサー著作集』(印刷博物館蔵)がお目見えします。併せて、京都の実験的工房・上加茂民藝協団の作品や、濱田庄司ら民藝運動の同人が美を見出した、イギリス16-17世紀のグレゴリオ聖歌楽譜(日本民藝館蔵)など、人びとの生活を彩ったヨーロッパの工芸品も併せてご紹介いたします。
鉄道網の発達に伴って郊外に移り住んでいった芸術家たちは、自然と人間との関係を再考し、労働に喜びを見出して生活全体を美しいもので満たそうとしました。自然との共生が求められる今、本企画展が、現代社会における私たちの生活を見つめなおす良い機会となることを期待いたします。