棟方志功は、日本の価値観が劇的に変容を遂げた大正から昭和の時代を、ひたむきに美を探究して生き抜き、おびただしい数の作品を残しました。彼は古代神話や仏教を主題にし、巡礼が寺に納める札にたとえて、自らの板画を柵と呼びました。棟方の作品には、根源的なる大いなる存在への礼賛が通底し、大宇宙から感受した生命のエネルギーが充満しているかのようです。
還暦を迎えた昭和38~39年に制作した「東海道棟方板画」をはじめ、晩年には本州、四国、九州を巡礼のごとく行脚し「海道板画」 シリーズを残しました。
本展覧会では、「祈りと旅」をテーマに、全長26メートルに及ぶ大作「大世界の柵」をはじめ、板画の代表作を網羅する他、アメリカ旅行でニュー∃ーク滞在中に制作した作品や、海道の柵シリーズの数々を紹介します。
また、彼が倭絵と呼んだ肉筆画や本・雑誌の挿絵、書、陶芸など多様な作品により、身命を板画道に捧げ、たゆまず歩き続けた棟方志功の足跡を辿ります。