長崎県美術館は2010年4月23日に開館5周年を迎えます。
これを記念して、スペイン国立プラド美術館が所蔵する、エル・グレコ作《聖母戴冠》を特別展示いたします。
ギリシアに生まれたエル・グレコ(本名:ドメニコス・テオトコプーロス、1541年~1614年)は、30代半ばから歿するまでの半生をスペインのトレドで過ごし、どのスペイン人の画家よりもスペイン的な精神と、カトリック的な熱情に満ちた作品を描いたことで高く評価される芸術家です。
《聖母戴冠》は彼の円熟期である50歳頃の作品で、揺らめく炎のような人体や、まばゆい超現実的な光彩の表現など、エル・グレコ芸術の真髄を堪能することができる名品です。
エル・グレコは日本においても高い人気を誇りますが、現在国内で所蔵されている作品は2点のみであり、この《聖母戴冠》は日本初公開となります。長崎は、エル・グレコが生きた時代にキリスト教がもたらされ、現在に至るまでとりわけマリア信仰に篤い土地柄です。この地で《聖母戴冠》をご覧頂くことは、歴史的な意義も深いのではないかと考えます。
長崎県美術館は、須磨彌吉郎氏旧蔵作品を核とした、東洋有数の規模のスペイン美術コレクションを所蔵しています。
そうした経緯から、開館前の2004年11月にスペインを代表するプラド美術館と交流協定を結んでおり、今回ついに作品借用が実現しました。マニエリスム最後にして最大の画家エル・グレコが描いた天上の光を、ぜひご堪能ください。