桜の花が散る頃、冬の寒さに耐えた山の木々が一斉に芽吹き始め、1年の中で最も生命力あふれる季節がやってきます。
街中で生まれた平松画伯は、鎌倉に転居してから自然に囲まれた生活が新鮮に感じられたそうです。青年時代は、運河や墓標など社会性の高い作品を多く描いていましたが、生活環境の変化は少なからず作品の制作に影響を与えているものなのでしょう。肌で感じる自然の息吹や彩りにいっそうの関心を持つようになり、画趣が変化してきたといいます。
自宅の庭にも所狭しと草花を植え、季節の移ろいに心躍らせる日々を送る画伯の作品には、生命に対する畏敬の念と深い愛情が感じられます。
現代の日本画において、伝統の色と形を華麗に展開する平松画伯が、春から夏へと移りゆく自然の美しさを瑞々しく描いた作品を展示いたします。