染色は奈良時代以降、日本で独自に発達した工芸技法です。諸外国の染色はわずかに東南アジアのバティック、中世ドイツの木版染を挙げることができますが、それに対し、日本の染色は友禅や絞り、型染め、紅型などのさまざまな技法があり、圧倒的な表現の豊かさを誇っています。
本展覧会では、北九州にゆかりのある染色作家7人の作品を紹介します。出品作家らは、画家や彫刻家が絵の具や粘土を使って自分の心情や人生観を表現するように、布に色や模様を染め、あるいは布による空間構成に自らの創意を重ねあわせて制作しています。小花や幾何学模様などによって装飾された、いわゆる伝統工芸品とは趣を異にする絵画的要素を取り入れた作品や、布を天井から吊るし、その柔らかく軽やかな素材の魅力を伝えるインスタレーションなど約80点を展示します。伝統的に育まれてきた染色の高度な技術と、伝統にとらわれることなく自由な発想によって生み出される彼らの作品は、これが染色作品なのかという驚きと新鮮さを感じさせます。
仕事振りが既に明確な作家から若手作家までが同じ展示空間でそのエネルギーを発散する渾然一体となった展覧会です。同時代に生きる作家たちの多彩な作品に染まる空間を通じて、各作家の個性の違いや、作品と空間との対話を味わうことができます。豊かな素材感と卓越した技術に裏打ちされた染色の美をお楽しみください。