写真界の“鬼”と言われた土門拳。彼が大切にしてきたテーマは「日本」そして「日本人」です。土門拳(1909-1990)の名作『古寺巡礼』は、日本の古典文化を独自の視点から追求した不滅の業績です。日本美に迫りながら日本人とは何かを考察しています。しかし忘れてならないのは、同時に日本の社会と日本人を鋭いメスで凝視し、絶えることなく日本の社会的矛盾を問い続けてきたことです。数々の街と人間を作品化したのも、この姿勢からうまれてきたものです。決して現実暴露ではありません。作品の根底にあるものは“土門拳のヒューマニズム”です。人間愛と言葉を換えてもいいでしょう。
土門拳は度々、「自分は日本と日本人が好きだ」と言い続けてきました。今回は代表作を中心に、昭和を生きた人々の姿をとらえた土門拳のすぐれた人間洞察を約250点の作品で振り返ります。