ジョルジュ・ルオー(1871-1958)が画商アンブロワーズ・ヴォラールの依頼で取り組んだ版画集『ルビュおやじの再生』。この版画集を制作するプロセスで生み出された作品は、「キリストの画家」ルオーのイメージを覆すような衝撃的なものばかりです。
舞台をフランスの植民地とするこの物語の挿絵制作を通して、ルオーは「黒人」や「熱帯」という新たなテーマに出会います。支配される「黒人」の先住民(被植民者)と、「ユビュおやじ」に代表されるグロテスクな「白人」の政治家(植民者)で綴られるルオーの絵画世界-そこでは、フランス植民地主義の諸問題が暴露される一方で、ルオーが描き出した「黒人」たちのしなやかな動きをとらえた優美な曲線には、ルオー芸術の新たな一面を発見することができます。
『ユビュおやじの再生』をめぐるルオーの作品はその特異性からか、これまで日本ではもちろん欧米においてもその全貌は明らかにされてきませんでした。本展はルオー財団の特別協力のもと、初公開作品を多く含む油彩、水彩、版画、資料を一堂に集め、「ルオーとユビュ」の再評価を行う世界で初めての展覧会です。