空前の歴史ブームといわれる昨今。日本人のアイデンティティ、心のルーツをたどる思いは、激動の世相を映すものかもしれません。急速に近代化をとげた、明治初期の日本でもまた、はじめは圧迫されがちだった旧来の伝統文化が、やがて見直され、重んじられるような機運の高まりがありました。そして、日本や東洋の歴史に登場する人物や事件、神話、物語などに取材した歴史画は、日本絵画の近代化にとって主要なテーマのひとつとなったのです。横山大観や木村武山など日本美術院の画家たちの間では重要な画材として捉えられ、さらに官展系の画家たちも、多くは、講談社の出版文化にも影響を与えました。大正末から昭和初期にかけて、多くの歴史画が、諸雑誌の口絵として掲載されました。また、『講談社の絵本』は、このような歴史画掲載の、言わば集大成とも言えます。今回の展示では、近代日本の歴史画の佳作と、雑誌『キング』などの口絵や『講談社の絵本』の原画類の、興趣に満ちた魅力をお楽しみいただきます。