武蔵野市の友好都市・南砺市は富山県西部に位置し、世界遺産「白川郷・五箇山の合掌造り集落」と演劇祭で世界的に有名な旧利賀村を擁する自然と文化の郷として知られていますが、第二次世界大戦後の一時期、この地に、版画家・棟方志功が住まいし、制作活動を行っていたことを知る人はそう多くはないかもしれません。
棟方志功(1903-1975)は昭和20年4月に戦禍を避けて富山県西砺波郡福光町(現南砺市福光町)に疎開、同26年11月まで6年8ヶ月にわたり滞在しました。浄土真宗が盛んだったこの地で「他力の心」に触れ、42歳から48歳までの働き盛りを過ごした棟方にとって、この時期は、あらゆる表現手段を試み、体得し、多くの秀作を生み、世界に飛翔するための飛躍台になった時代ともいわれています。
「南砺市立福光美術館」には青森出身の棟方にとってもうひとつの故郷ともいえる福光で製作した板画や書、陶芸作品、知人・友人にあてた手紙等、福光時代の棟方を知ることができる多くの資料が収蔵されています。
本展では、南砺市のご協力のもと、同館所蔵の棟方作品や関係資料を展示し、後に“世界のムナカタ”と呼ばれるようになった一人の偉大な芸術家が、福光の地に残した仕事とその足跡を辿ろうとするものです。