上村松園(1875-1949)は京都に生まれ育ち、鈴木松年をはじめ幸野楳嶺、竹内栖鳳に師事し、文展を主な活躍の舞台として、高い気品の漂う人物がを制作しました。松園の作品は美人画というくくりで語られがちですが、風俗的なものを中心に、歴史画、訓戒画、謡曲に取材したもの、母を追慕したものなどその内容は多様です。そこには、市井の人々の日々の営みに注がれる松園のあたたかな眼差しと、対象に対する強い想いが感じられるとともに、対象から徹底的に距離を置くことで、俗に陥ることのない厳しささえ漂います。それは、近世初期風俗画や浮世絵などの人物画のあり方を模索した松園の足跡でもあります。
この展覧会では、明治から昭和まで、《焔》(1918年)、《母子》(1934年)、《砧》(1983年)をはじめとする代表作約100点によって松園の画業を回顧するとともに、松園芸術の本質を改めて探ります。