「放浪の天才画家・山下清」。彼の貼絵には、緻密なデッサンに貼り込まれた
満色の色紙が、時に優しく、時に力強く、また四季折々の風景に込められた風の音やその土地の香り、人々の感情までもが巧みに、そして自然に息づいています。山下清(1922~1971)の作品が、今なお多くの人々を魅了するのは、この「自然体」から生まれる素朴さ、素直さが、ストレートに心に響くからなのではないでしょうか。
本展覧会は、山下清が生きた激動の昭和という時代の中で、“清が何を考え、何を求め、何を感じながら作品を生み出したのか”を山下清からのメッセージ
として今の時代に残したく企画されたものです。「日本のゴッホ」と賞賛された山下清。本展覧会では、その完成された技術が思う存分堪能できる代表的な貼絵作品を中心に、独特の手法で仕上げた油彩作品、点描画家としての才能を発揮した素描作品や陶芸作品など、芸術家としての作品はもとより、一人の人間としての山下清を知ることのできる遺品の数々やエピソード、放浪日記など、山下清の真の姿をご理解頂くために貴重とされる品々を多数展示いたします。
私たちの中にある山下清のイメージ。それは貼絵や放浪など、彼の生涯のごく
一部の事項であり、彼の本当の姿とは云えません。事実、マスコミやドラマ・映画を通じて一般に伝わるイメージは、実際の山下清とは全く違った人物像
であり、そのことに対し本人は、表現しきれない違和感を抱いていたのです。
山下清が生きた昭和は、戦争を挟み激動の時代でした。その時代を生きた山下清の生涯は、幸運と不運が背中合わせに共存する、波乱に満ちた人生であったに違いありません。
ご観覧いただく皆様には、今までの山下清のイメージを一度外し、何の先入観
も持たずに皆様ご自身の心の目で、ご鑑賞いただければ幸いです