資生堂アートハウスでは、わが国における近代ガラス工芸の開拓者であり、指導者でもあった岩田藤七(いわたとうしち1893-1980)と、その長男で同じくガラス工芸家の岩田久利(ひさとし1925-1994)、久利の長女で、工芸品のみならずガラスによる斬新な造形で注目を集める、イワタルリ(1951-)の作品40点による展覧会を開催いたします。
岩田藤七は、東京美術学校(現・東京藝術大学)金工科を卒業後、あらためて西洋画科に入学。同科卒業後は日本の工芸美術においては未開拓の分野であったガラス工芸の道に進み、豊かな色彩に複雑多様な表現を加味した宙吹きガラスの作品によって、芸術の分野のみならず、日常に用いられる工芸品としてのガラス工芸をわが国に幅広く定着させました。
息子の久利は東京美術学校工芸科を卒業後、父の設立した岩田硝子製作所に入所。日展や日本現代工芸美術展を中心に作品を発表し、父が確立した宙吹き方をさらに発展させながら、ガラス工芸界の第一人者として活躍しました。
また、資生堂が主催した「現代工藝展」(1975-1995)には創設メンバーとして、初回から1993年の第18回まで出品しています。
イワタルリはガラスを素材にした造形で注目を集める作家です。東京藝術大学大学院(鋳金専攻)を修了。資生堂が主催した「第5次椿会美術展」(2001-2005)の創設メンバーであり、アートハウス庭園内に設置されている大型の立体作品にみられるような、キャスト(鋳型)を用いた創作に新機軸を打ち出すと共に、岩田屋の伝統である宙吹きによる分野でもヴァリエーションに富んだ作品を発表しています。
今回岩田家三代の作品による展覧は、わが国におけるガラス工芸の歴史を振り返るものであると同時に、ガラスを素材にした芸術の今後の展開を広く示唆する内容となるでしょう。