漆器は、古来より耐久性や装飾性に優れた高価な品として生産され、貴人の邸や寺社において大切に使われてきました。なかでも木地に黒漆を塗って下地とした上に朱漆を塗って仕上げる器は、俗に「根来(ねごろ)」と呼ばれています。
「根来」の名称は、中世に栄えた紀州・根来寺で、本寺や子院などで用いられる漆器を自給自足していたことに由来します。根来寺で作られていた狭義の「根来塗」は、天正13年(1585)に羽柴秀吉の根来攻めにより途絶え、今に残るものもごく少数あるのみですが、良質な漆器として定評があった「根来塗」は、やがて優れた朱塗の漆器一般に対する通称とされるようになりました。
本展では、室町時代から江戸時代に作られた「根来」の数々を展示します。その優れた色とかたち、使っていくうちに備わった深い味わいをご鑑賞下さい。