板倉槐堂(いたくらかいどう)(1822~1879)は儒者で勤皇家でもあり、長州藩や土佐藩出身の勤皇の志士らと深い関係を持ち、倒幕運動を経済的に支えた人物でした。さらに、坂本龍馬が慶応3年(1867)、京都の近江屋で暗殺された事件は有名ですが、特に注目すべきは、襲撃の前日に龍馬を訪ねた最後の知人であると考えられ、龍馬の誕生記念に自作の書画を贈った人物が、板倉槐堂その人であったことです。
明治維新後、その功績により新政府の官僚となりましたが、明治5年(1872)、病気を理由にわずか5年で官職を退き、郷里の近江国坂田郡坂本村(現、滋賀県長浜市下坂中町)で隠遁風雅の世界に余生を送りました。
本展では、当時の文人たちが好んで描いた画題と個性的な筆跡が生み出す独特の趣きを持つ館蔵の板倉槐堂の書画作品を通じて、幕末維新の激しい時代を生きぬき、静かに晩年を過ごす板倉槐堂の心情を窺う契機としていただければ幸いです。