当館が所蔵する紀州徳川家伝来楽器コレクション(159件)は、主として紀州藩の第十代藩主徳川治宝(とくがわはるとみ・1771~1852)によって収集されたものと伝えられます。雅楽の楽器を中心に、吹きもの(管楽器)・弾きもの(弦楽器)・打ちもの(打楽器)など各種の楽器や、楽譜、調律具、収納袋や箱など附属品、さらに楽器にまつわる情報を記した附属文書から構成されており、楽器史や音楽史上きわめて重要な資料とみなされてきました。
今回の特集展示では、本コレクションの中から、琵琶をとりあげ、附属品や附属文書とともに展示します。コレクション中の琵琶は23面に及びますが、この中には、天武6年(677)の作と伝えられる琵琶を初めとする各時代の琵琶や、平家琵琶として用いられたもの、きわめて小型のもの、明清楽の流行を受けて収集されたと推測される中国の琵琶など貴重な遺例が含まれます。これらを展示することにより、一般にはあまり馴染みのない古楽器への理解をうながすとともに、高度な工芸技術や、江戸後期の大名家を中心とした文化の一端を紹介したいと思います。