青い海と白亜の街並み、緑豊かな大地に金色のサハラ砂漠-アフリカ最北に位置するチュニジア共和国は、現在8つの世界遺産を擁し、まさに“地中海の宝石”と呼ぶにふさわしい、風光明媚で魅力あふれる国です。この地は古代より、豊かな風土と良好な地理的条件のもと、多くの人と文化の往来がありました。
今からおよそ2800年前、海洋民族フェニキア人によって現在のチュニジア地中海沿岸の地域に植民都市カルタゴが建設されました。カルタゴは、地中海世界での異文化交流と巧みな海上交易により繁栄をきわめ、大国として長く覇権を握りました。しかし、その後勢力を拡大してきた新興国ローマと死闘を繰り広げ、英雄ハンニバルを輩出しながらも、ローマにより壊滅します。しかしカルタゴはここから奇跡的な復活を遂げ、ローマの要衝都市として、再び円熟期を迎えるのです。カルタゴはその歴史のドラマ性により、多くの人々の関心を呼び、近年フランス、ドイツ、アメリカなどでも大規模な展覧会が開催されました。
本展覧会では、チュニジア国立博物館群より日本初公開作品9割以上を含む160点余りの出品作品を1章「地中海の女王カルタゴ」と2章「ローマに生きるカルタゴ」の2つのテーマで構成し、歴史に様々な影響と多くの謎を残したカルタゴのダイナミックな軌跡をたどります。
地中海文明の結晶ともいえる美術工芸品や、カルタゴ人の精神性を物語る墓地からの出土品、またローマ時代に花開いた優美な芸術モザイクなど多彩な展示品は、みなさまを古代地中海の旅へといざなうことでしょう。