怪異小説『雨月物語』で有名な上田秋成(1734~1809)は、小説家としてだけでなく、俳人・歌人・国学者としても多くの著作を残し、独自の世界を築きました。
大坂に生まれた秋成は、前半生をこの地で過ごし、43歳の時に『雨月物語』を出版します。60歳で京都に移住しますが、その後も続く旺盛な執筆活動には驚くべきものがあります。晩年の傑作『春雨物語』も京都で執筆されたものです。また、屈託のない語り口で記された随筆『胆大小心録(たんだいしょうしんろく)』からは、当時の文人や画家たちとの交流の様子が生き生きと浮かび上がります。
この展覧会では、初期から晩年にいたる秋成の自筆原稿や出版物などを広くあつめ、彼の幅広い活躍をご紹介します。さらに、交友のあった画家たちの名品をあわせて展示し、上田秋成という魅力的な人物を通して見た、18世紀後半の多彩で豊かな文学・芸術の世界をお楽しみいただきます。