2002年9月、箱根仙石原に開館したポーラ美術館は、西洋絵画、日本洋画や日本画、アール・ヌーヴォーを中心としたガラス工芸、化粧道具、東洋陶器など約9500点におよぶコレクションを有する私立美術館です。なかでも、19世紀後半の印象派から20世紀にいたるヨーロッパの近代絵画は、国内随一ともいえる質の高さを誇ります。本展は、そのすぐれた作品群から、印象派とエコール・ド・パリに焦点をあて、74点の名品を選りすぐってご紹介するものです。
第1章「印象派」は、モネ、ルノアール、ピサロら印象派の代表的な画家をはじめ、その結果からさらに新しい境地を切り拓いていったセザンヌ、スーラ、ルドンなどの作品36点で構成されます。つづく第2章「エコール・ド・パリとピカソ」では、モディリアーニ、シャガール、レオナール・フジタ(藤田
嗣治)など世界各地の画家が集い、20世紀初頭にパリで花ひらかせた多様な表現を、38点の絵画で紹介します。なかでも、ピカソの《海辺の母子像》は、ポーラ美術館が開館以来門外不出としてきた「青の時代」の傑作です。
この珠玉のコレクションは、ポーラ・グループの前オーナー、鈴木常司によって築き上げられました。ひとりの企業人の美術への深い愛情と審美眼が形成したコレクションが公立の施設である横浜美術館で紹介されることは、本展のひとつの隠し味です。展覧会会場からつづけて横浜美術館コレクション展をご覧いただき、両者の対比をとおして、「私」と「公」の美術・文化へのアプローチのちがい、各々の特質を感じていただければと思います。同時に、そのいずれもが、文化によって社会を豊かにしようとする強い意志を共有していることも、浮き彫りにされることでしょう。