このたび、山口蓬春記念館では、新春展「山口蓬春とやまと絵-新興大和絵会時代を中心に-」を開催いたします。
日本の絵画は、古来より中国絵画の影響を受け発展してゆきますが、日本独特の感性によって風景や風俗を描いたやまと絵と呼ばれる絵画が平安時代初期に生まれます。以来、やまと絵はその様相を変えながら多様に発展し、明治時代に入ると西洋からの文化と比較され、その伝統的な様式が改めて人々を魅了することとなりました。
そのような時代を背景に、山口蓬春(1893-1971)は、東京美術学校日本画科において、やまと絵の大家である松岡映(えい)丘(きゅう)(1881-1938)から指導を受け、卒業後は映丘が主宰する新興大和絵会の同人として活躍します。
新興大和絵会では、展覧会を開いて作品を発表するほか、同人たちが合同で作品を制作するなど数々の意欲的な試みが行われ、まだ若い画家たちの団体でしたが、画壇においても大変注目を集めました。
また顧問としてこの会を支えた映丘の存在も大きかったのではないでしょうか。やまと絵画家として有職故実を研究する映丘の指導は、蓬春が制作した様々な古典絵画の模写からも窺えます。
映丘というよき師のもとで研鑽を積んだことは、その後の蓬春の活躍から考えても大変重要であったのです。
本展覧会では、蓬春の多岐に亘る画業の中でも基盤となった新興大和絵会時代に焦点をあてると共に、あわせて蓬春が収集したやまと絵のコレクションも展示し、日本人の感性が生んだ伝統的な古典美の魅力に迫ります。