明治13年、東京に生まれた鰭崎英朋は、17歳の時、浮世絵師・月岡芳年門下の右田年英に入門しました。新進の日本画家として活動しつつ、同時に挿絵画家としても活躍した英朋は、後に挿絵に専念、生涯挿絵一筋に生きました。
妖艶な美人画を得意とした英朋は、あらゆる雑誌や新聞を舞台に、人気挿絵画家として華やかに活躍しました。なかでも『東京朝日新聞』に掲載された相撲取組挿絵は、多くの人々に絶賛されました。
英朋は、まだ挿絵画家という職業もその地位も確立されていなかった頃、ひとつの時代を築き上げた先駆的存在の挿絵画家として位置づけられます。しかし、多くの読者を魅了し、支持を得たにも関わらず、没後、英朋の名は少しずつ忘れられていきました。
ところが、近年、英朋再評価の動きが見られるようになり、その名が再び輝き始めました。
本展では、英朋が日本近代の挿絵史に遺した軌跡を、初公開作品を含めた約350点によって展覧し、英朋の魅力を再検証いたします。
挿絵画家として強い信念と誇りを持ち続け、生涯を貫き通した英朋の、明治気質あふれる「妖・艶・粋・美」の世界をご堪能ください。