浮世絵の主要なジャンルのひとつに、美人画があります。美人画はその当時江戸の街で評判だった女性をモデルにすることもあれば、歴史上の人物や物語の登場人物を描くこともありました。
もっとも名高い美人画家は、18世紀末期から19世紀初頭にかけて活躍した喜多川歌麿で、現在でも絶大な人気を誇っています。これに対し、幕末明治期の浮世絵は、かつて不当に低い評価を受けていました。けれども、制作された当時はとても人気があり、人々はこぞって歌川国貞(のちの三代歌川豊国)や渓斎英泉の美人画を買い求めました。現在に残る莫大な作品数がそれを証しています。風景画でおなじみの歌川広重も、特徴的な顔立ちの美人画を残しました。20世紀が近づくにつれて浮世絵は衰退するかのようにみえますが、月岡芳年、豊原国周、橋本周延らは文明開化期のファッションをとりあげて浮世絵史の最後を飾りました。このように、19世紀を通じて美人画は描き続けられ、かずかずの名品がうまれたのです。
本展覧会は、千葉市美術館の所蔵する喜多川歌麿、鳥文斎栄之、英泉ら浮世絵界を代表する美人画の名手の作品を特別公開するとともに、当館のコレクションの中から三代豊国、広重、芳年、国周、周延らの美人画を厳選して、合計約120点の作品を紹介するものです。美人画の変遷でたどる19世紀浮世絵史、たっぷりとお楽しみ下さい。