西洋の美術を学んで明治以降の日本の洋画は発展していきました。しかし、多くの日本の画家たちが留学して西洋の技法やスタイルを学ぶようになるその少し前、19世紀後半の西洋では、日本美術から大きな影響を受けて、日本的な要素を取り入れたジャポニスムという新しい表現が試みられていたのです。
浮世絵などの奇抜な構図や、陰影のない平坦な画面といった思いがけない方法は、ルネサンス期以来続いた保守的な造形表現を打ち破って、新しい絵画世界を築いていこうとした画家たちにとって大きな啓示となりました。また絵画に表された自然に対する感性や、美しい装飾を施した道具類に、日常生活の隅々にまで行き届いた日本人の美意識を見出したのです。日本の画家が留学した当時の西洋は、日本文化との出会いや交流を体験した世界でもあったのです。
この展覧会では6つの章立てにより、西洋と日本の相互の影響関係を軸に、明治期から戦後美術までのさまざまな画家たちの様式の展開や成熟の過程をご紹介いたします。また本展は、当館と石橋美術館の所蔵品によって構成されています。コレクションの豊かさと幅広さをお楽しみいただければ幸いです。