本展では、黒崎俊雄(くろさきとしお 1946-)の近作を中心に展覧します。黒崎は、1971年に東京藝術大学美術学部油画専攻を卒業し、現在、神奈川県葉山町で制作を続けている造形作家です。その作品は、初期のモノクロや落ち着いた色彩の抽象表現から、近年の鮮やかな色彩と動物や植物のイメージによる生命感あふれる表現へと様々な変化を遂げてきました。
展示では、まずイタリア留学時代の作品を紹介します。初期の作品はインクで細かな線を丹念に描き、やがて画面を埋め尽くすというものです。90年代になると、絵具を重ね塗りした上から、動物、樹木、人間をモチーフに線を刻む手法を用いたり、童画風の形を描くなど、それまでの作風から大きな転換をはかることとなりました。近年は、同じサイズの紙にネコを描いて壁一面に並べたり、新聞紙をつなぎあわせた大作や、スチレンボードのピースを配したインスタレーションなど、力強くのびやかで遊び心を刺激する作品を制作しています。展示の中心となるのは、こうした90年代以降の近作です。このほか、小中高校生と共同でインスタレーション制作を3回おこない、徐々にできあがる作品のコーナーを展示室に設けます。
抽象的な作風で絵画のもつ根源的な問題に取り組んだ表現から、親しみやすさをあわせ持つ近年の作品まで、多彩な表現をご覧ください。