都築響一は、現代美術、建築、デザインに加え、生活や文化に関わる広範な分野を対象とした執筆活動、書籍編集を続けてきました。フリーランス編集者として『ポパイ』『ブルータス』誌で活動したのち、1993 年には東京の生活感あふれる居住空間を撮影し、まとめた写真集『TOKYO STYLE』を発表。一躍注目を集めました。
また、日本各地に点在する秘宝館や村おこし施設などユニークなスポットを集めた『ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行』では、第23 回木村伊兵衛写真賞を受賞するなど、写真家としても高い評価を受けています。また2001 年には、閉館した秘宝館の展示物を横浜トリエンナーレで展示するなど、国内外の展覧会にも参加し、美術作家としても活動しています。
都築が注目してきたものは、無名の人々の手によるデザインや文学、さらに近年はスナックやカラオケ映像といった、それまで光が当てられることのなかった、人々のリアルな生活様式や創作活動です。それらは、私たちの身近な所に存在し、実は個性豊かで独創性に富んだものでありながらも、多くの人が見落としてしまっている事物といえます。それらを取り上げ、提示することで、マスメディアやさまざまな分野の専門家が発する情報からは見えてこない、現代社会の様を描き出しているのです。
本展は、都築がこれまでに展開してきた活動を包括的に紹介する初の本格的な個展であり、彼が日本各地で取材し、撮影した写真と、映像、それらの対象について語る言葉、さらには対象の実物などにより構成されます。広範にわたる関心領域がダイナミックに交錯する、めくるめく都築ワールドを是非、ご堪能ください。