安田靫彦(1884-1978)は、明治・大正・昭和の三代にわたり活躍した日本画家です。歴史画や静物画において理知的な造形による清新な作風を展開し、日本美術院の指導的な立場にあり続けました。
靫彦が終生梅樹を愛し、数多く描き出したことは広く知られています。梅をはじめとする四季折々の花木は、歴史画にも取り入れられました。画家が描き出す人物の周囲には、さりげなく草花が配され、あるいは花木と密接なかかわりを持つ伝説的な人物像が制作されています。
本展では、人物と自然の親交を示す歴史画をはじめ、特に愛情を注いだ梅や四季を彩る花木を展示いたします。あわせて、その制作のために日常的に行われた川崎市市民ミュージアム所蔵の写生類を展観し、靫彦の自然に対する親密な心と表現をご紹介します。