土門拳のライフワークである『古寺巡礼』。約40年の全写真家人生にわたって、京都・奈良を中心とした全国各地100ヵ所以上の寺社を撮影しました。土門の撮影は、まず対象の「凝視」にはじまります。全体像から次第にディテールへ、1時間でも2時間でも克明に観察してゆくのです。そして独特のライティングと、焦点をギリギリに絞る鮮鋭描写の手法によって、対象の材質感と量感を余すところなくフィルムに捉えてゆきました。
被写体は仏像・古建築から、庭園、引き手や釘隠しなどの工芸品におよびます。土門は、その内面に存在する“日本民族の美意識”をとらえ、選び抜いています。
今回はその古寺巡礼の旅の中から、今年遷都1300年祭を迎えた奈良大和路を撮影地とした作品をご覧いただきます。土門のゆるぎない視点による「日本美」をご堪能ください。