『愉快な骨董』『これは「骨董」ではない』『貧好きの骨董』など、民藝や骨董への愛情を持ち前のユーモアたっぷりに綴った著作で知られる尾久彰三氏(1947-)。「骨董とは生きていく上のお囃子で、元気の素」という尾久さんは、柳宗悦とともに民藝運動を行っていた伯父の影響で、早くも10歳頃にもの集めに開眼。長じて敬愛する柳が創設した日本民藝館の学芸員として長年勤務し、益々その眼に磨きをかけました。ものを観るということは自分自身を知ることという姿勢で、何気ないものの中から深遠な美を見出す尾久さん。その視線が常に温かいのは、ものを観ること、ものと語らうことに無上の喜びを感じているからにほかなりません。
本展は新刊本『観じる民藝』の刊行にあわせ、コレクションから選りすぐった、李朝の工芸品、日本の古陶磁、仏像や仏画、染織品、木工品など約350点を展覧いたします。何やら不思議な御縁で舞い込んできたもの、はたまた金策を労してようやく手中に収めたもの、今日はやめておこうと思いつつ一目惚れしてしまったもの等々、尾久さんが観て、観じ、愛してやまないものたちへの思いを語った名文とともに多彩な品々をご紹介いたします。