伊藤若冲(1716-1800)は、近年一般の美術愛好家にも広くその名を知られる存在となりましたが、その作品については代表作《動植綵絵》をはじめとする華麗な着色画を中心に語られることが多く、遺作の大半を占める水墨画については必ずしも正当な評価を得ているとは言えません。しかし、晩年に至るまで生涯描き続けた水墨作品には若冲の独特の造形感覚が遺憾なく発揮されており、彼のもう一つの魅力をかたち作っていると言えるでしょう。
本展覧会は、若冲の水墨の作品を中心に、関連する着色の作品も含めて構成します。加えて、黄檗僧・鶴亭(1722-85)らの作品によってその水墨表現の前史を示し、若冲水墨画の世界に迫ります。