津田信夫(明治8年~昭和21年)は佐倉藩堀田家中で代々漢方医をつとめる家に生まれ、東京美術学校に入り、鋳金を学びます。大正12年にヨーロッパ留学中には、パリ万国現代装飾美術工芸博覧会(通称、アール・デコ展)の審査員をつとめ、帰国後には、ヨーロッパの新しい思潮や工芸事情を伝え、若い工芸家たちに影響を与え、モダニズム運動の推進者として評されています。しかし、津田の作品には、モダニズム的な作品ばかりではなく、新たに構想された伝統的な作品を認めることができます。これは津田が、日本の伝統的な生活様式に融合する作品を制作するとともに、変わりつつある新たな生活空間にも適応した「日本的」な作品を目指したものでした。
本展では、津田信夫の作品のうち所在の明らかなものを可能な限り展覧し、津田が試みた「日本的な工芸」について紹介します。