優しい風合いの絹織物、縮緬(ちりめん)。独特の光沢とやわらかさ、伸縮性が染物に適しており、着物などに使われてきました。
江戸時代の末ころ、武家や商家など裕福な家庭の女性たちによって、着物の残り裂や古裂を利用して、縮緬の巾着や袋物などの小物が作られるようになりました。動物や虫、花…身近なモチーフを象ったこれらの小物は、確かな裁縫技術に支えられ、実に可憐に細緻に仕上げられています。そして明治時代には、女学校や裁縫塾の教材として、ちりめん細工は若い女性たちの“針仕事の腕”を示すものとなりました。
昭和以降、洋装の広まりや戦争の混乱などを経て、ちりめん細工は一時忘れられた存在となりましたが、近年、姫路の日本玩具博物館では、古作品の収集、指南書の復刻、技術の復元と講習会開催など、その復興に取り組んでいます。
本展では、同館の全面的な協力を得て、ちりめん細工の古作品、現代に復元された作品、指南書など約400点を展示します