日本では、飛鳥時代には、原料から加工まで一貫した国産ガラスの製造が可能となり、ガラス玉類(ビーズ)が装身具などに使われていました。しかし、本格的にガラスの器作りが始まったのは、江戸中期のこと。南蛮船がもたらすヨーロッパのガラス器に憧れ、17世紀前半から中頃までには、長崎で吹きガラスが始められたと考えられています。以来、陶磁器や漆器と同様に、さまざまな生活用具が作られるようになりますが、他の素材と異なり、光を透し、響きあうガラスは、日常に独特の輝きを放ちます。盃や徳利、皿などの飲食器はもちろん、ガラス製の櫛・簪や文房具、ビーズで飾られたたばこ盆は、時におしゃれの代名詞となり、時に数寄者の的となりました。また、ガラスの虫籠や吊灯籠など、今ではほとんど消えてしまったものも少なくありません。
本展覧会では、江戸から明治にかけて、驚くほど、さまざまな物がガラスで作られ、生活の隅々に浸透していった様子をご紹介します。粋で、遊びごころ一杯の「和ガラス」の美をお楽しみください。なお、本展覧会会場吹き抜けスペースでは、今では日本で2軒だけになってしまった江戸風鈴によるインスタレーションも展開します。