戦後の荒廃からようやく落ち着きを取り戻した1950年代半ば、ヨーロッパ諸国では経済が急速に復興し、豊かさの時代を迎えようとしていました。自動車やテレビや冷蔵庫が一般家庭の手に届くものになり、十代の若者たちがスマートなスクーターを買える時代が到来したのです。
こうした変化にいち早く反応したイギリスの若者たちは、1960年代に入ると自分たちの音楽やファッション、映画や娯楽に興味をもち、斬新で個性的・刺激的なものを求めていきます。この時代、ロックンロールをはじめ新しい音楽が次々と生まれ、イギリスからはビートルズ、ローリング・ストーンズ、ヤードバーズ、ザ・フーなどのバンドが次々にデビューし、世界へと羽ばたいていきました。ロンドンのカーナービー・ストリートには、若者向けのブティックが次々とオープンし、ストリートには、モッズ・ルックできめた若者たちがたむろし、ミニスカートをはいたツイッギーが登場して、ロンドンが若者文化の発信地となっていきました。「スウィンギン・ロンドン」と称されたこの興奮と熱狂のなかで、伝統的な階級の壁は崩れ、才能があれば誰にでも成功する道が開かれ、様々な分野で新しい才能が次々と芽生えていきました。
本展は、ロンドンで1950年代から1960年代にかけて日常生活に取り入れられた各国のデザイン製品とともに、ファッションや音楽をベースとした若者文化をとりあげ、当時のライフスタイル全般を振り返ろうとするものです。