《原爆の図》を描き、戦争とは何かを生涯かけて問い続けた丸木位里・丸木俊夫妻が、最後にたどりついた場所。それが沖縄でした。丸木位里は、「沖縄を描くことがいちばん戦争を描いたことになります」という言葉を残しています。
1945年3月の米軍沖縄上陸。数か月におよぶ地上戦の末、沖縄の人びとは米軍に追い詰められ、味方であるはずの日本軍にも死の選択を突きつけられ、次々と命を落としていきました。そこには、極限の戦闘状態における軍隊の真の姿とともに、近代以降、沖縄が強いられてきた複雑な歴史の影が透けて見えたのです。そしてその影は、敗戦後の米国統治の時代を経て、1972年の日本復帰後も米軍基地の集中という形で続いています。
本展では、米軍普天間基地の一部を返還させた土地で、丸木夫妻の《沖縄戦の図》を展示している佐喜眞美術館の協力により、丸木夫妻が沖縄戦を取材して描いた絵画を中心に、複雑な歴史の“記憶”を想起させる沖縄の芸術家たちの絵画、立体、写真、映像などを紹介します。
これらの作品と向き合うことで、普天間基地の移設問題で揺れる沖縄からの人びとの声を実感し、国家による“記録”とは別の視点から語り継ぐ“記憶”の意味を再考することができるでしょう。
〈出品作家〉
安次嶺金正、安谷屋正義、新垣安之輔、オサム・ジェームス・中川、嘉手川繁夫、儀間比呂志、金城明一、金城満、金城実、近田洋一、玉那覇正吉、照屋勇賢、
仲里安広、比嘉豊光、丸木位里、丸木俊、山城見信、山元恵一
(絵画、立体、写真、映像など59点)