本展は杭州市考古所により発掘され、2001年に中国の十大考古発見の一つに選ばれた杭州市老虎洞磁窯址の発掘成果を日本で初めて紹介するものです。南宋時代(1127~79)、都であった臨安(現在の浙江省杭州)には宮廷専用の製品を生産する窯、いわゆる「南宋官窯(なんそうかんよう)」が設置されました。この南宋官窯には、修内司(しゅうないし)官窯と郊壇下(こうだんか)官窯があったことが文献から知られており、郊壇下官窯については杭州烏亀山(うきざん)山麓にその窯址があることが発掘により明らかになりました。しかし、修内司官窯の窯址についてはこれまで大きな謎となっていました。近年、南宋の宮城にほど近いかつての修内司営のあった場所に老虎洞(ろうこどう)窯址が発見され、大量の青磁片とともに「修内司」銘資料も出土したことから、この老虎洞窯址が「修内司官窯」ではないかと現在注目されています。南宋官窯の青磁は、薄く黒い胎土と何層にも厚く掛けられた釉薬により、「粉青(ふんせい)」と呼ばれる独特の釉色や「貫入(かんにゅう)」と呼ばれる釉のひび割れを生み出し、中国の青磁の最高峰の一つとなっています。
本展では日本初公開の杭州老虎洞窯址の出土資料約50点により、幻の名窯、南宋修内司官窯の謎とその魅力に迫ります。