幕末から明治にかけて日本へもたらされた水彩画は、当時「みづゑ」と呼ばれ、明治30年代後半から明治末期にかけて隆盛の時期を迎えます。油彩画家たちがすぐれた水彩画を残すとともに、水彩を専門とする画家たちも登場しました。
本県出身の中川八郎(1877-1922)は油彩画家として活躍する一方、画業の初期には水彩画の優品も多く手がけました。特に、渡米して開催した水彩画展により資金を得てヨーロッパ留学を果たしたことは、日本の水彩画の歴史において重要な出来事です。
「水彩画の父」ともいえる大下藤次郎(1870-1911)は水彩専用画家の代表格です。特に風景を得意とし、細やかなタッチで数々の精緻な水彩画を描きました。また、出版活動や講演会なども精力的に行い、水彩画の普及に尽力しました。
本展では、愛媛県美術館と島根県立石見美術館のコレクションより、中川、大下の作品をはじめ、みずみずしい感性と確かな技量により描かれた水彩画の数々を、貴重な資料とあわせて紹介します。