スイスの小都市、ヴィンタートゥール。日本ではまだあまり知られていませんが、人口10万人ほどのこの町に、ヨーロッパ屈指のモダン・アートのコレクションがあります。スイスが誇る「モダンの館」、それがヴィンタートゥール美術館です。
フランス印象派に始まる新しい美術の展開と時を同じくして、新興都市ヴィンタートゥールでは、進取の精神に富んだ企業家たちが競うように良質の個人コレクションを築き、さらに公共の美術館をつくることにも熱意を注ぎました。こうして1916年、ヴィンタートゥール美術館が開館します。彼らのすぐれた鑑識眼と運営手腕に導かれ、また寄贈などの支援を受けて、そこは眼の至福に満ちた特別な場所へと成長しました。スイスの透明な空気とも響き合う明るく澄んだ美意識に貫かれた粒ぞろいのコレクションは、その地理的条件もあって、ヨーロッパを広く見わたす視点に裏打ちされています。
建物の改修に伴い、この名コレクションをスイス国外で初めてまとめて紹介する機会が実現しました。今回の日本巡回展は、大きな反響を呼んだヨーロッパ巡回展に続くものです。モネ、ルノワール、ファン・ゴッホ、ボナールからピカソ、クレー、ジャコメッティ、モランディまで、すべて日本初公開の90点が織りなす饗宴をご堪能ください。