お茶にはたくさんの効用があるといわれます。慌ただしい生活の中で、ほっと一息つかせてくれる一杯のお茶は、こころを癒してくれます。また日々健康に暮らせることも、私たちが身近な飲み物としてお茶を愛してきた歴史によるものでしょう。
古く中国より請来された喫茶の習慣は、大きく抹茶と煎茶とに分けられます。そもそも飲み方の違いによる区別ですが、わが国では著名な茶人たちによる茶の湯の盛行により大成された茶道と、中国趣味に憧れた学僧や文人たちによる煎茶の愛好とに分かれて伝播継承しました。
いずれも喫茶をたのしむことに変わりありませんが、両者の趣向性や世界観は異なっています。最も顕著な違いが見られるのが、喫茶の空間で用いられる、さまざまな道具へのこだわりです。人と人とが喫茶を通して交わる中で、用意される道具の特徴は、もてなす人の感性や美意識を端的に反映しています。つまり喫茶のたのしみとは、美術鑑賞の実践によって、新たな美を発見する事とも言い換えられるでしょう。
本展では、出光コレクションより茶道具、煎茶具、またこれらに関連する書画・工芸の優品、約120件を一堂に展示いたします。私たちの美意識が、喫茶を通してどのように育まれてきたかを用の美からふり返りつつ、個性豊かな日本美術の特質を探ります。