板橋区立美術館では開館以来、日本の近代絵画の中でも先鋭的な作品をコレクションしてまいりました。今回はこれらのコレクションを「美術運動」の観点から8つのグループに分けてご紹介いたします。
大正から昭和初期にかけて、日本にはダダイズム、未来派、フォービスムやシュルレアリスムなどの外国の新しい美術の傾向が次々に紹介され、画家たちはそれらを学び、吸収し、独自の解釈による作品を発表しました。イタリアやドイツの美術の動きに影響を受けたのは「マヴォ」というグループです。今回展示する浅野孟府の《マヴォイスト》は象徴的な作品の一つです。また、戦前の画家の中には芸術の都、パリで学び、その技術を日本に伝える役割を果たした人もいました。美術学校や画塾も次々に設立され、日本の画壇は華々しいものとなりました。
しかし、1930年代から1945年の太平洋戦争終結まで日本は外国と戦争を始めたため、思想、言論、表現に制限が加えられ、画家たちは自由な制作・発表が難しくなりました。そのような状況下で描き続けた画家もいます。そのうちの一つ、当館で2008年度に紹介した「新人画会」の画家たちの作品の一部をこの度新たにコレクションに加え、改めてご紹介いたします。
そして、戦後は美術団体が再建され、戦前までの美術の流れに加えて、社会的、理論的な観点から制作する画家たちも出てきました。米軍基地問題、ダム建設などに取材したルポルタージュ絵画運動の中でも珍しい1点は《週間小河内》です。これは山下菊二、尾藤豊らが作ったガリ版印刷のもので、闘争の様子が表現されています。
また、戦前パリで学んだ岡本太郎が戦後、東京都庁舎のために作成した壁のレリーフの原画も今回新収蔵作品となり、板橋で初のお披露目です。今回の展覧会では、日本近代の美術運動を作品のみならず資料も合わせてご紹介いたします。美術作品を社会や美術の流れから見ることで、美術が社会と密接な関係を持つことが明らかになるでしょう。