当画廊で1年半ぶりとなる柳ヨシカズの個展を開催します。
柳の作品の最大の特徴であるシンメトリーで描かれた油彩新作14点を展示します。
作品は動物や人間の顔や胴体の部分で2分したシンメトリーのため、2匹が1匹にくっついており、一見うす気味悪く見えますが、中央に想像で縦線を入れてみると愛らしくも見えます。
「シンメトリーにすると、モチーフのイメージが想像以上に広がります。美しさと気持ち悪さは表裏一体なので、想像以上に不気味になる場合もあるし、美しいと思えることもあります」
制作に打ち込んだ美大時代は、自分がいいなと思った絵の要素を取り込んで描いていたが、本当にそれでいいのか自問自答することもあったという柳。
転機が訪れたのは、ニューヨーク近代美術館でリヒター展を見て。
シンプルな絵がベストだと確信し、「いわゆる静物画の描写から飛躍できない自分のために工夫したのがシンメトリーという手法なんです。構成による頭でっかちな絵ではなく、色と形で見せる深味のある絵は、シンプルな形でも出せる」と思ったと言います。
彼の描くモチーフは、クマ、ウサギ、オオカミ、女の子、日常品とさまざまで、それらをパソコン上でトリミングして左右対称に組み合わせ、色も変換。この下絵をもとに柳は、キャンバスに油絵具で描いていきます。
「作品にかっちりとしたテーマがない分、自分が感動したことを絵に取り込め、ありきたりのモチーフでもそれを超えた存在に表現できるのが絵の利点だと思っています」と言う柳は、今ではどんな対象でも絵にできる自信があると言います。
彼にとってシンメトリーは最上の武器なのです。