戦前の独立展に彗星の如くあらわれ、独特の色彩感覚で人々を魅了した洋画家・菅野圭介(1909-1963)の画業をふりかえります。
1935年ヨーロッパに渡り、フランス南東部・グルノーブル在住の画家フランドランの教えを受けた菅野は、帰国後の1937年、独立美術協会展に出品した《フランダース古城》(本展出品)によって注目され、児島善三郎らの賞賛を浴びます。戦争の時代にも個性的な画風を失わず、1943年には会員に推されました。
戦後、互いの才能を認め合った三岸節子との「別居結婚」を宣言、世間を驚かせます。2人の関係はわずか5年で破局を迎えますが、このころの作品は、色彩も線もより大胆に、躍動的になり、第2の充実期となりました。のちに葉山にアトリエを構え、新たな展開を模索していたさなか、病のため53歳の若さで世を去ります。
菅野の作品は、単純化された構図と、数色に限定された色彩の調和に秀でた個性を持つばかりでなく、東洋的、浪漫的といわれる深い詩情を感じさせます。今回の回顧展は、近年発見された作品を含め、画業の全貌を展望するものです。