高山登(1944生まれ)は、「枕木」や鉄、ワックスなど物質感の強い素材によって、特定の場所を緊密な空間へと造りかえるインスタレーション(立体造形)によって、日本の現代美術における重要な役割を果たしてきました。展示空間や環境を深く考察したうえで行われるその造形は、1960年代末から今日まで一貫してゆるぎがありません。
現在、東京芸術大学で教鞭を執る作者は、それ以前、四半世紀に及ぶ長い期間、宮城教育大学で指導を行い、多くの後進を育ててきました。また地域に根ざした野外展の企画、参加を含む多彩な発表活動を通じて、東北地方の美術を活性化させてきた功績は多大なものがあるといえましょう。
仙台と東京を中心に、多くの個展を開催してきたほか、早くから内外の重要な展覧会に参加して作品を発表してきた高山の活動歴は膨大なものですが、立体作品のほとんどは展覧会が終わると同時に解体され、写真などの記録でしか知ることができない性質のものでもあります。本展は、高山の特徴である枕木によるインスタレーションを再制作という形ではなく、美術館の複数の空間を使用した、新たな大規模作品として展開すると同時に、これまでの活動を写真やヴィデオ映像によってご覧いただくことによって、作家・高山登の「現在とこれまで」をあますところなく紹介します。