早川良雄氏は、1917年大阪に生まれ、戦後のグラフィック・デザイン界を長年にわたり牽引し、後進に多大な影響を残しつつ生涯現役のまま2009年3月に急逝されました。
早川氏の多くの商業広告デザインとグラフィック・アート作品には、日本調モダンといった都会的な感性とともに、自由奔放な発想と大胆な構成表現、そして鮮やかな色彩感覚が溢れ、直観的な個性に満ちたイラストレーション作家の姿勢が貫かれています。特にその制作を象徴する女性像や女の“顔”の作品での多様な表現手法によって、情感と造形に迫るイラストレーションの力が発揮されました。また、後年にシリーズ化された“形状”の作品では、抽象形体を客観的に把握しつつユニークな空間認識で自在に描写するなど、多彩なシルクスクリーンやドローイング作品を表してきました。
本展では、早川氏との展覧会構想を基として、そうした“顔”の原画とポスター作品を特集し、あわせて“形状”シリーズの作品を対照させ、主要な作品約70点によってその遺業を回顧します。