京都文化博物館では広く内外の諸文化を紹介し、人類文化の同質性と異質性の比較を通して、異文化理解を広げる活動を行っている。今回は、日本文化の基層とも深くつながっているアイヌ文化に着目した。
ロシアを中心とした欧米の博物館・美術館には、19世紀から20世紀初頭にかけて収集されたアイヌ資料が収蔵されており、とくにロシア民族学博物館には、約2600点の資料がある。この資料中には、日本に現存しないものも数多く含まれており、古い時代のアイヌ文化とその芸術を知る上では好個の資料である。さらにそのデザインは今日的視点からも再評価できる。
本展は、ロシア民族学博物館が所蔵する資料の中から、とくに芸術的価値の高いものを「カムイ(神)とアイヌの人々が創造したもの」として「まとう」「いのる」「まかなう」の3部に再構成し展示する。あわせてオムスク造形美術館に所蔵されている平沢屏山の江戸時代末から明示にかけてアイヌの人々を描いた絵画資料を紹介し、アイヌの伝統文化と芸術に親しみながら、アイヌ文化の理解と振興に寄与するものである。
なお、アイヌの古式舞踏はユネスコの世界無形文化遺産に登録されることになっており、今回はその記念展としても位置づけている。